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卒論から生まれた「初音ミク」分析本

 歌声を作りだすコンピュータソフト「初音ミク」は、一部の熱狂的ファンが支える仮想アイドルの域を超え、すでに社会現象にまで増幅している。米国トヨタのCMキャラクターに抜擢され、ロサンゼルスでのライブ・イベント(今年7月)で成功を収めた電子の歌姫・初音ミクとは何か。それはネット、リアルな世界に何をもたらしたか。CGM世代の大学生が卒論をきっかけに出版した「初音ミク革命」は、コンテンツビジネスの未来像まで示唆した。

「初音ミク革命」160ページ、千葉北図書、1,000円(税込)

「初音ミク革命」160ページ、千葉北図書、1,000円(税込)

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 「初音ミク」関連本はすでにさまざまな切り口、取り上げ方で出版されているが、大学生の卒論がきっかけで出版された分析本は異色だ。副題に「とある大学生の一考察」とあるように、筆者・阿部裕貴さん(札幌市立大学卒)の思い入れ、主観がやや前面に出ているものの、初音ミクの誕生秘話から、LAのライブイベントでの現地取材でのレポートや、その存在を「植物の種のよう」であり、どのような花が咲くかは育てる人の自由であると論じている点は興味深い。本書の結論として、コンテンツビジネスの将来像まで言及しているところは、CGM世代ならではの視点とウィットに富んでいる。

 「これまでのようにただパッケージ化されたCDを買うのではなく、これからは自分がその音楽にいくら払うかで値段が決まっていく、まるで寄付のような経済システムが生まれてくるのではないか」と考察し、これがクリエーターを支援する新しい仕組みに発展させられるのではないかと期待する。

 出版元は、エンタテインメント系ソフトを中心に全国で100店舗以上展開する複合店チェーン、ワンダーコーポレーションの出版部門。09年に同人誌の販売を始めたことをきっかけに10年に発足した。今年春、「ぼくとワニのニコラシリーズ」などの絵本を企画、出版している。

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